地方都市で増加する「フランチャイズ経営会社」とは?
みなさんは「フランチャイズ経営会社」という業種を聞いたことがあるでしょうか?
「フランチャイズ経営会社」とは、特定の商圏を中心に複数のブランドのフランチャイズを(代理店として)大規模展開している企業のこと。
例えばビデオレンタルや宅配ピザ、個別指導塾など、複数のフランチャイズの経営を(ほぼ)専業で行っている企業を指します。
現在、特に地方都市において、この「フランチャイズ経営会社」が増えているのだとか。
「フランチャイズ経営会社」とは?
「フランチャイズ経営会社」をイメージしやすいように、架空のフランチャイズ経営会社・K社に登場願いましょう。
K社は、東京から新幹線で1時間ほどの人口約30万人の地方都市に存在する企業です。戦後まもなく創業し、かつてはガソリンスタンドを10店舗近く経営していました。
しかし1990年代のバブル崩壊後に「ガソリンスタンドの経営だけでは、これからは生き残れない」と自社の事業構造を見直していきます。
当初は飲食コンサルタントを入れて、自社開発で居酒屋やイタリアンレストラン、ラーメン店などを周辺に開店しましたが、ことごとく失敗。一方で、同時期に開店したフランチャイズのビデオレンタル店とピザ宅配が成功。以降、自社による店舗開発は一切せずに、全国展開している企業のフランチャイズを積極的に導入し発展していきます。
その後、予想通り本業であるガソリンスタンドの経営は厳しくなり次々と閉店。現在、ガソリンスタンドは1店舗を残すのみとなるものの、飲食から教育まで幅広い業種のフランチャイズ展開に成功し、見事に「フランチャイズ経営会社」へと事業転換を果たすことができました。
【「フランチャイズ経営会社」K社の事業展開】
※元々はガソリンスタンドを複数経営していた
※全て同一の商圏内(人口30万人程度の地方都市周辺)で展開・ビデオレンタル店「A」⇒3店舗展開
・宅配ピザ「B」⇒4店舗展開
・宅配寿司「C」⇒3店舗展開
・コンビニエンスストア「D」⇒6店舗展開
・カラオケボックス「E」⇒2店舗展開
・漫画喫茶「F」⇒2店舗展開
・個別指導塾「G」⇒5店舗展開
・ガソリンスタンド「H」⇒1店舗展開
あくまで架空の企業であるK社ですが、これが典型的な「フランチャイズ経営会社」の例になります。
みなさん「フランチャイズ経営会社」をイメージできたでしょうか?
このK社のように、複数のフランチャイズを積極的に導入して発展を遂げる(あるいは事業転換を成し遂げる)企業が、全国の地方都市で増えつつあります。
地方都市で「フランチャイズ経営会社」が増加している理由とは?
では、いったいなぜ地方都市で「フランチャイズ経営会社」が増えているのでしょうか?
その理由は、大きく二つ挙げられます。
一つ目は、失敗のリスクが少なく、資本さえあればスピード出店が可能なフランチャイズシステムと、事業の多角化や業態転換を模索する地方企業の資本が結びついたパターン。
例えば、先ほどのK社のような地方のガソリンスタンドチェーンだったり、巨大なスーパーマーケットに価格競争で太刀打ちできずに業績が悪化した地方の小売業者などが、手っ取り早い打開策としてフランチャイズを導入。結果として成功し、さらに別のフランチャイズを導入して気がつけば「フランチャイズ経営会社」に業態転換していた……というケースです。
このようなケースでは、すでに既存の会社にある程度の信用が蓄積されていることから、銀行も積極的に融資を行うため、経営者の決断次第で成長スピードが速まります。
二つ目は、当初から失敗のリスクが少ないフランチャイズのシステムを利用して小資本で起業。徐々に成功を積み重ねていき、資本の再投資先として別のブランドのフランチャイズを展開し「フランチャイズ経営会社」となっていくパターンです。
なぜ複数のフランチャイズを運営するのか?
と、ここでひとつの疑問が湧きます。
「あるフランチャイズで成功したのならば、そのフランチャイズを専業とし、別の地域でもどんどん展開していけばよいのではないか」という疑問です。
もちろん、そういった「フランチャイズ経営会社」(特定のフランチャイズを専業とし利益を上げる企業)もあります。
しかし先ほど例に挙げたK社のように、地方都市で創業し、その地方都市で長年信用を積み上げてきた企業の場合、別の地域へ進出するよりも特定の商圏内で複数のブランドのフランチャイズを展開することを好むケースが多いようです。
その理由としては、既に近隣の商圏のフランチャイズ権を別の企業に押さえられており、新たに店舗を開店するには商圏が飛び地となってしまうという点や、特定の商圏内で複数のブランドのフランチャイズを展開することでリスク分散(異業種のフランチャイズを展開することで、景気に左右されにくくなります)となる点、それからシナジー効果も期待できるという点などが挙げられるでしょう。
また、複数のブランドを組み合わせることで、比較的狭い商圏でも集中出店が可能となり、狭い商圏であってもかなりの売上を作ることができます。
さらに、特定の商圏内に複数のブランドのフランチャイズを多数展開することで、店舗管理や人員の配置などが効率的になることも容易に予想がつきますね。
「フランチャイズ経営会社」の強みとは?
「フランチャイズ経営会社」の強みについても考えてみましょう。
「フランチャイズ経営会社」の最大の強みは、K社の例でも出てきましたが「自社による店舗開発を一切しないこと」。
自社による店舗開発に比べ、失敗のリスクが少なく、資本さえあればスピード出店が可能となる点は大きな強みとなります。
多額の資金が必要となる店舗開発費用をかけることなく、フランチャイズ本部に蓄積されたマーケティング情報や商品開発やオペレーション、人材募集などに関する様々なノウハウを活用することができるのです。
強いフランチャイズを見極める力が必要になる
ただし、「フランチャイズ経営会社」も全てが成功しているとは限りません。
「フランチャイズ経営会社」として成功している企業の多くは、「次に来るフランチャイズ」をきちんと見極めてフランチャイズを選定しています。フランチャイズなら何でもよいというわけではないのです。
余談ですが、宅配ピザで知られる「ピザーラ」や個別指導塾の「明光義塾」をフランチャイズとして運営している「フランチャイズ経営会社」には、成功している企業が多い印象を受けます。
日本全国がどこも同じような風景になる理由のひとつでもある
現在、全国の地方都市、特にロードサイドは「どこへ行っても同じような店ばかりで、地方都市はどこも似たような風景である」と言われています。
その最大の理由としては、巨大資本を武器に全国展開を行う大手量販店(スーパーマーケット、ホームセンター、カー用品店など)の存在が大きいとされています。
ただ、その一方で、実はこのような「フランチャイズ経営会社」の存在も大きかったりするのです。
地方都市で「フランチャイズ経営会社」が増加している現状を考えると、「どこへ行っても同じような店ばかりで、地方都市はどこも似たような風景である」という状況は、今後、さらに加速していくと予想されます。
こればかりは、時代の流れなのかもしれませんね。
以上、地方都市で増えつつある「フランチャイズ経営会社」についてでした。起業を目指すみなさんや「フランチャイズ経営会社」への就職や転職を考えているみなさんの参考になれば幸いです。
※本記事は2017年8月時点の情報を元に執筆されたものです。あらかじめご了承ください。
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