「生徒たちの成績を向上させて第一志望校に合格させる!」

夢や希望にあふれ、やりがいのある職業のひとつである塾や予備校の先生。しかし他の業種同様に、「塾・予備校」業界の現実はそう甘くありません。

ここでは「塾・予備校」業界に就職(あるいは転職)する前に知っておきたい基礎知識を解説します。

【離職率が高い?】就職・転職活動をする前に知っておきたい「塾・予備校」業界の基礎知識
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近年の「塾・予備校」業界の動向

まずは、近年の「塾・予備校」業界の動向から確認しましょう。

少子化のあおりを最も受けるとされる「塾・予備校」業界。少子化の進行とともに市場規模は逓減傾向にあります。

特に、大学受験でのAO・推薦入試の増加による浪人生の減少が著しく、多くの大学受験専門の予備校が、その影響を受けています。

2014年には、大手受験予備校の代々木ゼミナールが全国27校のうち20校を閉鎖すると発表し、塾・予備校業界に大きな衝撃を与えたことは記憶に新しいのではないでしょうか。

・参考リンク:【ドラッカー】代々木ゼミナールに学ぶ事業転地(業態転換)の重要性

以前には主流であった、1クラス数十人の集団に対して1人の講師が授業を行うスタイルは減少し、現在では個別指導やインターネット回線を利用した配信授業(録画済み・ライブ)などが主流となりつつあるようです。

さらに、このような状況を背景に業界内の再編も活発化しています。

以下に近年の「塾・予備校」業界の動向を簡単にまとめます。

【近年の「塾・予備校」業界の動向】

・少子化の進行とともに市場規模は逓減傾向

・大学受験でのAO・推薦入試の増加による浪人生の減少

・大学受験では現役志向が高まる

・首都圏では中学受験熱が高まる

・1クラス数十人の集団に対して1人の講師が授業を行うスタイルは減少

・個別指導やインターネット回線を利用した配信授業などが増加

・個別指導の需要が高まり直営・フランチャイズでの展開が全国で増えている

・業界内の再編も活発化

「塾・予備校」業界はあくまでもサービス業

「塾・予備校」業界に就職(あるいは転職)を希望する場合には、教育業というよりも、サービス業として位置づけたほうがよいでしょう。

なぜなら、「塾・予備校」業界に就職(あるいは転職)する場合、多くのケースにおいては講師職としての採用が想定されますが、講師職は労働時間やキャリアプランなど、飲食店をはじめとするサービス業と類似する点が多いからです。

労働時間が不規則な「塾・予備校」業界

「塾・予備校」業界の最大の特長としては、労働時間が不規則な点が挙げられます。

日々の授業の開始時刻は生徒たちが学校から帰宅後となるため、16時頃から21時・22時頃までが授業のコアタイムとなります。管理部門以外の講師職は、基本的に昼頃に出勤し21時・22時以降に退社することが多くなるでしょう。

また、生徒たちが休みとなる土日や祝祭日、年末年始、ゴールデンウィーク、お盆の時期、長期休暇中に出勤し平日休みとなるパターンも多くなります。

「塾・予備校」業界の繁忙期

各企業の決算資料を見てもわかりますが、受験生にとって入試最後の追い込みとなる9月・10月頃から1月頃にかけてが、「塾・予備校」業界の売り上げが伸びる繁忙期となります。

繁忙期の講師職は休みがとりにくくなったり、多少の体調不良であっても出勤しなければならない、あるいは連続勤務が続くような状況となることも少なくありません。

これら労働時間が不規則な点や繁忙期の忙しさのため、「塾・予備校」業界の講師職は未婚率や、結婚していたとしても離婚率が高いとされています。

将来のキャリアプランが立てにくい「塾・予備校」業界

「塾・予備校」業界への就職(あるいは転職)は、将来的なキャリア形成を考えた際に不安を感じることが多いともされています。

20代・30代は人気講師としてバリバリ活躍できても、40代・50代になった際にどうするか……。このような点を意外と考えていない人も多いかもしれません。

年齢を重ねても講師職を続けることができるのか、ライフプランに合わせて管理部門に異動することができるのか、これらを就職(あるいは転職)する際には考えたいものです。

【「塾・予備校」業界におけるキャリアプランの一例】

・講師職を続ける

・管理部門に異動する

・同業他社に転職する

・異業種に転職する

・独立・開業する

また同業他社に転職する際も、前職での合格実績や給与は多少は考慮されるかもしれませんが、多くのケースでは一から下っ端としてやり直さなければならないなど、やはり異業種に比べてキャリアの積み重ねが考慮されないケースがほとんどなのも事実です。

異業種に転職する際にも、特に講師職は子供が相手の商売。会社が積極的に社員教育を実施しない限り、基本的な社会人としてのマナーが身についていないなどといったこともあり、転職に不利になるケースも少なからずあります。

このようなことから、「塾・予備校」業界への就職(あるいは転職)は、飲食店などのサービス業への就職(あるいは転職)と類似する点がとても多いのです。

離職率が高い「塾・予備校」業界

一般的に「塾・予備校」業界は離職率が高い業種だとされています。

それはやはり、30代あるいは40代になった際に、将来的なキャリア形成を考えると不安を感じる人が多いからなのかもしれません。

転職情報誌を見ればわかりますが、「塾・予備校」業界での求人では未経験者可の募集が意外と多いもの。これが何を意味するかは、みなさんの想像にお任せします。



教員免許を持っているなら学校の先生を目指すべき?

もし、あなたが教員免許を取得しているのであれば、将来の安定性やキャリアプラン、ライフプランの立てやすさを考えると公立・私立の学校の先生を目指した方が得策だと言えるでしょう。


もちろん塾や予備校の先生という職業は、やりがいのある職業のひとつであることは否定できない事実です。

しかしながら、「塾・予備校」業界に就職(あるいは転職)を希望する際には、上記の点に注意して就職活動(あるいは転職活動)をしたいものです。


以上、就職・転職活動をする前に知っておきたい「塾・予備校」業界の基礎知識についてでした。参考になれば幸いです。

《「塾・予備校」業界について深く知る参考リンク》

転換期を迎えた学習塾業界の動向
(東京三菱UFJ銀行)

<文責/F>

※本記事は2016年10月時点の情報を元に執筆されたものです。あらかじめご了承ください。


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